第1回【体験談編】司書になりたい理由。
はじめに
「好き」とか「やりたい」といった前向きな気持ちは言葉にするのが難しいですよね。
人って、意外と自分の気持ちに気づかないものだから、気づいた時には口にするようにしています。
「実は司書になりたいのだ」と家族や友人に話せば、「もったいない」、「現実を見ろ」、「今の仕事がよい」と言われます。
これらは世間一般の助言として極めて的を射ていると思います。
実際、今の仕事は土日祝日休みで、給料も司書のそれより高額です。
それに、司書は決して楽な仕事ではなく、経済的に厳しい待遇だという現実については、司書を目指すわたしのほうが、彼らよりもよく知っています。
それでも、わたしが司書の世界に飛び込むと決めたのは、一時の感情や憧れではありません。
新卒で働き続けてきた会社を10年勤めて、ずっと考え続けてきた一つの結論です。
一言でいえば、「司書は、わたしの生き方に合っている」と感じたからです。
今回は、わたしが司書を目指す本当の理由を、飾らずにお話しします。
理由1:昔から「知的好奇心旺盛」、「整理せずにはいられない」性分
わたしは昔から、いろいろなことに興味を持つ子どもでした。
そして、子どものころからずっと惹かれ続けてきた場所が「図書館」でした。
先人たちが蓄積してきた知識や知恵が本という形になり、数多の本が美しく体系化され、完璧に整理されたあの空間は、とても気持ちがいい。
「今日はこの棚を見てみよう」
日本十進分類法に沿った本棚を順々に探検し、胸が高鳴る感覚。お気に入りの本を見つけ出した時の喜び。今でも当時の気持ちを忘れていません。
そして、大人になってから気が付きました。
わたしは、「散らばったものを整理する作業が好き、というか、やらずにはいられない」性格だということに。
職場でも、書類がどこにあるか分からず探す時間がとにかく嫌で、ルールに従ってカチッと分類・整理し、書類の保管場所を作ってあげることに喜びを感じます。
周囲の人を観察すると、必要な書類を見つけるために多くの時間をかけています。
わたしは、最初に時間をかけて整理をしたほうが、長期的には時間の節約になると考えますが、周囲にそういった感覚を持っている人はいないようでした。
この周囲の人に比べて少し「度を越した几帳面な性分」をそのまま活かせる場所は、図書館のほかにないと考えました。
理由2:騒がしい場所が苦手。消極的な理由から見つかった「適性」
それから、もう一つは自分の体質的な問題(弱点)をカバーする必要がありました。
わたしは昔から、人が多く騒がしい場所がどうしても苦手でした。
大人数の職場では、その空間にいるだけで、人一倍体力を消耗してしまいます。
人の表情や動作から、その人の体調や感情を推測してしまう癖があり、これは本当に弱点だと感じます。
そのため、洞察力があるとか、やさしく気配りができるとか言われることもありますが、考えなくてもよい時に他人のことを考えてしまうので、本当に集中しなければならないことに、集中することが難しいのです。
大人数の会議のあとや、職場の飲み会は、がっつり疲れて1週間分くらい老けた気がしますね。笑

加えて、もともと体力があるほうではありません。
そのため、大人数で競争し常に成果を求められる仕事や、身体を酷使する仕事は向いていないと考えるようになりました。
「静かに過ごせる場所で、自分の限られた体力を正しく使って働きたい」
この願いは、人によっては「後ろ向きな理由」だと捉えるでしょう。
しかし、自分の弱み(騒がしいのが苦手、体力がない)を冷静に分析した結果、わたしが最もパフォーマンスを発揮できる「静かな戦場」が図書館だったのです。
理由3:資格を取った今だからわかる「司書のやりがい」
「子どもの頃からのあこがれ」や「静かな場所で働きたい」という思いからスタートした司書への道ですが、実際に近畿大学の通信教育部で2年半猛勉強し、資格を取得した今、わたしの意識は少しずつ変化していきました。
図書館はただ「静かで本が置いてある場所」ではありません。
図書館が収集する資料は、その地域の歴史を伝え、人々の生活を支える「情報」そのものです。図書館は地域にとっての「情報のインフラ」なのです。
司書の勉強を通じて、「図書館を運営するということは、地域の未来を創っていくことである」と感じるようになりました。
そこに自分が関わるということの責任の重さと知的なやりがい。
綺麗ごとかもしれませんが、「司書は人生を賭してもよい職業」だと、わたしは思っています。
また、利用者が何かに困って図書館にやってきたとき、対話を通してその人の悩みや課題を紐解き、必要な情報へ案内する司書の仕事(レファレンスサービス)は、すでに述べたわたしの性格に非常に合っている気がします。
よく人から道を尋ねられます。自分では分からないけど丁寧に教えるからか、割と喜ばれます。笑

最初は「静かな場所がいい」という内向的な理由だったものが、今では「地域の情報基地を支え、人の悩みや地域課題を解決したい」という明確な理由に変わりました。
図書館司書という仕事は、わたしの長所も短所も全てひっくるめて「自分の性格にかなり合っている仕事」だと考えています。
自分の得意な「整理」を仕事にし、自分の苦手な「騒がしさ」を避け、自分の知的好奇心を原動力に地域の情報基地である図書館を発展させていく。
10年間の会社員生活を経て、ようやく「自分が自分らしく戦える場所」、「自分の能力を最大限発揮できる場所」が見つかりました。 それが図書館でした。
だからわたしは、司書の世界に飛び込みます。
